ドイツとユーロの行末

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ここ最近株式、先物、

為替市場の空気感がけっこう変わりましたね。

順調に円安向かってると思いきや一気に5円ほど上がり、

ユーロは対ドル対円で落ち、

原油が80ドル台前半までさがり、

欧州指数爆下げ、

日経225と米国指数も下がりーのと、

10月中旬に入って慌ただしくなってきました。

まあ元々統計的に10月は下げやすいのですが、
今回は季節要因というよりも欧州含めた世界経済の停滞
がどうやら理由の一つっぽいです。

加えて中東の産油国+アメリカVSロシアなどの政治的な対立
も重なって色々な市場が同時に影響を受けている状態です。

正直言ってあまりにも同時多発的にイベントが起きる
ので全て追いきれてません。

なので、

今回はドイツ及びEUとユーロに絞って見ていきましょう。

ここ最近EUの景気悪化、
特にこれまでEUを牽引してきたドイツの景気悪化に歯止めがかかりません。

直近の指標で言うと、

4-6月期の経済成長率はマイナス、

製造業受注、鉱工業生産共に大幅減、

そして各方面で話題になってますが
最もインパクトがあるのがドイツ国債ですね。

なんと1%割れの0.82%!

2013年は確か2%くらいだったよーな・・・

2014年に入ってからの利回りの下がり方が半端ないですね。

さらにフランスの10年国債が1.26%、

イタリアが2.5%

スペイン2.2%

と好評絶賛低下中です。

ちなみに利回りが下がるということは、
国債が買われているということです。

なぜ国債が買われるのでしょうか?

しかも一時期けっこうヤバかった
スペインの国債まで買われてるわけですが、
(2012年は金利7%台でした)

一体なぜでしょうか?

理由はカンタンで、

EU各国にてデフレが進行しているからです。

例えばスペインの9月のインフレ率は「-0.1%」

イタリアが「0.1%」でギリギリライン、

ドイツが「0.8%」と

EU主要国の物価が継続的に低下し始めています。

ちなみになぜデフレ(物価が継続的に下がる)になるのかというと、
需要が供給より少ないためです。

白菜の豊作貧乏という現象をご存知でしょうか?

豊作で白菜が採れすぎて価格が下がり、
さらに売れ残った白菜は廃棄されてしまうアレですね。

一国のデフレ現象も構造は同じで、
供給が需要を大幅に上回ってしまうとモノやサービスの価格が下がり、

結果的に物価が下がり、
失業率が上がり、
リストラが増え、
平均給与が下がっていくのです。

ちなみに日本がデフレに突入した大きな原因の一つが
90年代のバブル崩壊と

そこにさらに消費税増税と財政政策の失敗が重なったためと言われています。

バブルの崩壊で企業や個人が巨額の借金を背負い、
その後ずーーーっと稼いだおカネを借金返済にまわしてきたので
消費(需要)が増えず、

デフレが慢性化してしまいました。

で、EUはどうかというと、

リーマン・ショックのバブル崩壊で大打撃を受けたものの、
ドイツ経済が好調だったので何とかなってきたところがあります。

ちなみにどうやって好調を保ってきたのかというと、

2008年のリーマン・ショックまでは同じユーロ圏内への輸出
で稼ぎ、

2009年以降はユーロ圏外への輸出で稼いできました。

特にリーマン・ショック以降はEU各国の債務危機などでユーロ安になり、
尚更ユーロ圏外への輸出が好調だったわけです。

ちなみに日本では2011年以降アウディが増え始めたと言われてますが、

2010~2012年の間に欧州で何が起きたか覚えてますか?

主に

・ギリシャ危機
・スペイン危機
・ポルトガル、イタリア、アイルランドの経済不信

(キプロス危機は2013年)

なわけですが、

この時期のユーロ円は95円~110円くらいのレンジでした。

ドイツはこの時期のユーロ安を利用してユーロ圏”外”への
輸出を伸ばしていたと思われます。

ドイツ経済が好調だったおかげで不況で失業率が高いユーロ圏内の
国に住む人達が(ギリシャとか)移民としてドイツで仕事に就くことができていたのです。

要は受け皿的な役割を果たしていました。


しかしここ最近の世界的な不況で、

その絶好調だったドイツがついに失速し始めたわけですから、
これはEU全体にとって非常に深刻な問題です。

ドイツの輸出依存度は40%を超えてますので、
外需が停滞するのは致命的なんですね。

リーマン・ショックの打撃で元々不況だったドイツ以外の欧州諸国に加え、
さらにドイツまでもが失速したため、

日本を追うようにいよいよEUでデフレの兆候が出てきたというわけですね。

で、その結果がEU各国の国債金利低下です。

デフレ=需要が少ない状態であることはすでに書きました。

需要が少ないということは、

例えば住宅ローンを組んで家を買ったり、
企業が設備投資のためにおカネを銀行から借りたり、
個人がおカネを借りて消費したり、

そういう循環が停滞している状態です。


ではおカネ(ユーロ)
を持っている金融機関はどうするかというと、
運用先として最も無難な国債を買うのです。

これ、どこかの国に似てませんか?

そう、日本です。

デフレ⇒国債金利低下

この流れはまんま同じです。

ただし正直EUの方が事態は遥かに深刻ですが。

というかEUという構造自体にもはや限界があるとも言えます。

反面日本にはまだまだ底力が残ってます。

日本はデフレ脱却のために3本の矢(通称アベノミクス)

・金融政策
・財政出動
・成長戦略

を推進してますが、

今後EUがデフレを脱却するためには日本のように金融政策と財政出動
を本格的にやっていく必要があります。

つまり、意図的にバブル的なものを発生させて
経済を回すしか残された道はありません。

カンタンに言うと、

ECBがユーロを刷ってカネ余り状態を作り、
そのおカネをEU各国の財源にあてて需要を生み出し、

物価を上昇させる必要があるのですが、

EUは日本と違い、
欧州中央銀行が完全に独立してますので、

どこかの国が金融・財政政策やろうにもドイツをはじめ
EUの許可がなければ動けません。

勝手にユーロは刷れませんし、
勝手に財政支出も増やせません。

というか「無駄遣いするんじゃねー!」ドイツに釘刺されてます。

EU各国はガチで縛りプレイを強要されているのです。

さらに厄介なのは、

ドイツ現首相のメルケル氏が公約の一つとして、

「政府収支均衡」を掲げていることです。

政府が財政出動するということは、
すなわち借金するということですから

ドイツが財政出動に賛成するということは即ち”反”大衆迎合となり、

政治生命に関わる問題になってきます。

要するにEUは自分たちが作ったルールに縛られて
今完全に動けない状態に陥ってしまっているのです。

今後予想される展開としては、

1.大規模な量的緩和
2.大規模な量的緩和+財政政策
3.いずれもやらない

ですが、

仮にこのまま「何もしない」を選択した場合、
さらにデフレが進行して実質金利がプラ転しますので、

「ユーロ買い圧力」が徐々に高まってきます。

そうなると輸出が生命線のドイツはさらに苦しくなり、

受け皿としての機能が失われ
結果的にEU全体が苦しくなります。

ということで、しばらくはドイツ、フランス、イタリア、
スペインあたりの国債と、

ドイツの失業率及び金融・財政政策方針は非常に注目される
重要材料になるのでチェックしておきましょう。

ユーロドルは長期圧力はまだ下ですが、
直近は上にも下にもいけず揉む展開になるんじゃないかとみてます

PS.

今日の話もそうですが最近の世界の政治経済動向を見ていると、
どうしても「経済・金融の限界」というものを認識せざるを得ませんね。

そしてさらに「個人としてどういう道を選び、どのように生きていくか?」を一人一人が
自分で考え、決める段階にいよいよ来ているように感じます。

 

 

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